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2015年ヘルスケア関連企業の新規上場と主要上場企業の決算動向

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創薬バイオベンチャーの新規上場は3社

2015年の新規上場企業数は、14年から18社増加して98社となった。初値が公募価格を上回る企業は90社と前年と同じく好調な市場環境を反映した。リーマン・ショック時の09年には新規上場件数は19件で、底を打ったと言ってよいであろう。

 

2015年の日経平均株価の動向をみると、アベノミクスなどの効果もあり、4月には15年ぶりに2万円を超えた。夏場以降は中国経済の先行き不安、パリでの同時多発テロなど、投資家の心理を冷ます事象が続き9月には日経平均株価は1万7000円を割り込む場面もあった。しかし、堅調な企業業績を背景に12月は再び2万円の大台を回復した。高株価の中で、新規上場を果たした会社も100社の大台にのる勢いだった。しかし、00年の204社、06年の188社と比べると未だ半分以下のレベルであることも事実だ。

 

ヘルスケア関連企業についてみると、前年の8社から1社少ない7社の上場があった(表1)。その内、創薬バイオベンチャーではサンバイオ、ヘリオス、グリーンペプタイドの3社が新規上場を果たした。特筆すべきことは、サンバイオとヘリオスが再生医療関連銘柄であることだ。

 

画像_表1_2015年に上場したヘルスケア関連企業-compressed

※表をクリックすると別ウィンドウでPDFが開きます

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬事法の一部を改正する法律)」いわゆる改正薬事法および、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療安全性確保法)」いわゆる再生医療新法が13年11月27日に公布、翌14年11月25日に施行された。従来の化学合成の医薬品と同じ評価を求められていた再生・細胞医療製品であるが、新法によって早期実用化が可能になり、難病などの患者の治療の選択肢が増えることが期待され、医療機関しかできなかった治療用の細胞の培養も企業において効率的にできるようになった。経済産業省は2050年に世界の再生医療の市場規模を38兆円、周辺産業市場を15兆円と予測する。今まで、規制の壁に阻まれていた再生医療バイオベンチャーであるが、改正薬事法と再生医療新法の施行が商機となることは間違いない。

 

しかし、騰落率ついて見るとサンバイオが-14.5%、ヘリオスが22.5%、グリーンペプタイドが-8.0%と他のヘルスケア関連企業と比較して低い結果となった。創薬バイオベンチャーでは多額の資金調達をする。そのため、受給のバランスもあり、騰落率が低くなったと推測している。ちなみに騰落率がマイナスとなったサンバイオは市場から73億円を、グリーンペプタイドは29億円を調達した。

 

 

バイオベンチャーは毎年、株式上場を果たしている

過去を振り返ると、02年にアンジェスMG、トランシジェニックの2社、03年では、メディビック(現メディビックグループ)、メディネット、オンコセラピー・サイエンス、総合医科学研究所(現総医研ホールディングス)の4社が、04年においては、新日本科学、DNAチップ研究所、そーせい(現そーせいグループ)、LTTバイオファーマ(2011年に上場廃止)、タカラバイオの5社、05年ではメディシノバ・インク、エフェクター細胞研究所(現ECI、2012年11月に上場廃止)の2社、07年は免疫生物研究所、ジーエヌアイ、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの3社、08年はナノキャリア、カルナバイオサイエンス、アールテック・ウエノ(2015年11月に上場廃止)の3社、09年ではキャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、テラの3社、10年はセルシード、11年ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、スリー・ディー・マトリックス、カイオム・バイオサイエンスの4社、12年はジーンテクノサイエンス、UMNファーマの2社、13年にはメドレックス、ペプチドリーム、リプロセル、オンコリスバイオファーマ、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズの5社が、2014年にはアキュセラ・インクとリボミックの2社が上場している。このようにバイオベンチャーはほぼ毎年、公開を達成している。新産業の育成を目的に、経済産業省は02年から3年後の05年3月までに大学発ベンチャー企業1000社設立の計画(平沼プラン)を掲げ、研究助成対策や経営支援制度を行ってきた。その成果といって良いであろう。ただし、バイオベンチャーを取り巻く環境は刻々と変化している。その中で、公開企業の決算を見ても事業に成功した企業グループと苦戦を強いられている企業グループに線引きができるようになった。表2に2015年度の上場バイオ企業の業績を纏めた。

 

画像_表2_2015年度上場バイオベンチャー企業の決算-compressed

※表をクリックすると別ウィンドウでPDFが開きます

 

バイオインダストリー協会の調査によると2014年8月までの設立企業数および廃業企業数は、累計でそれぞれ996社、144社と報告している。バイオベンチャーは、2000年代前半では年間90社を超える設立がみられたが、05年以降急激に減少し、2011年以降の設立数は10社程度。解散・清算した廃業企業数をみると、08年ごろから毎年10社前後の状況で、拮抗してしまっている。危機感を募らす政府は、将来の産業を作り出すために大きく動き出した。

 

政府はベンチャー企業を後押し

「科学技術イノベーション総合戦略2016」が16年5月に閣議決定された。これまでの施策のなかで、その役割が十分に発揮できる環境が整備できなかったことの反省から、新規事業のための環境創出として、各省の連携の下で以下の施策が打ち出された。

 

  • 研究開発のスピードアップや新事業および将来事業の有効な創出の手段として、大企業とベンチャー企業の連携促進や大企業からのスピンアウトを通じて、人材・技術の好循環を促進【経済産業省】
  • 事業計画、マーケティング、販路開拓等の事業化ノウハウを有するベンチャーキャピタリストをはじめとした人材の専門的な知見を活用し、中小・ベンチャー企業のニーズに合わせた技術開発および経営支援をハンズオンで行う取組みを推進【総務省、文部科学省、経済産業省】
  • 研究開発成果の事業化の拡大やベンチャー企業の参画機会の拡大の観点から、基礎研究フェーズから事業化を見据えた実用化フェーズまで複数のステージゲートを設けた多段階選抜方式の導入を推進【総務省、経済産業省】
  • ベンチャー関連施策を有機的に統合・連携させる「ベンチャー・チャレンジ2020」を策定し、グローバル競争力のあるベンチャー創出促進に向けた取組を一体的に推進【内閣官房、関係府省】

 

6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」でもイノベーション、ベンチャー創出力の強化が掲げられた。「組織」対「組織」の本格的な産学連携を行い企業から大学・国立研究開発法人等への投資を3倍に増やす。また、本格的な産学官連携・グローバル連携を実践して国内外からトップ人材や投資を呼び込む戦略研究拠点を2017年度中に少なくとも5拠点創出するとして、新たな技術シーズをビジネスに結び付けるための施策について講じている。生産性に大きく影響を与えるイノベーション・ベンチャーを継続的に生み出す仕組みをつくらなければならない。

 

厚生労働省は2015年9月、「医薬品産業強化総合戦略~グローバル展開を見据えた創薬~」を策定した。これは6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太の方針2015)」に盛り込まれている「基礎的な医薬品の安定供給、成長戦略に資する創薬に係るイノベーションの推進」「医薬品産業の国際競争力強化に向けた必要な措置の検討」のための実施的な総合戦略となっている。この戦略の中では新薬メーカーの研究所から生まれる新薬が減少する一方、バイオベンチャーが新薬を生み出す事例が増加。その結果、製薬企業は海外のベンチャー企業の買収等により新薬パイプラインを確保する傾向が顕著になっており、製薬産業におけるバイオベンチャーの重要性が高まっていると指摘している。各メーカーが研究戦略の見直しを行うとともに、ベンチャー企業を育成するシステム(バイオベンチャーのエコシステム)確立のために、必要な条件を分析・整理した上で、官民一丸となって我が国のバイオベンチャーの振興に取り組むべきだとしている。

 

これらの指摘のとおり、国内では革新的新薬を創出するバイオベンチャーによるイノベーションが適正に評価されていない。さらには市場価値へ反映する仕組みも整備されていない。現状を打破しなくては、国際的なベンチャーを育てることはできないことは言うまでもない。政府の施策は正しい。如何に実行するかである。その成果に期待するところである。

 

 

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