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2014年ヘルスケア関連企業の新規上場と主要上場企業の動向

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2014年の新規上場企業数は、13年から22社増加して80社となった。公募価格を初値が上回る企業が多く、前年と同様に好調な市場環境を反映した。09年のリーマン・ショック時のIPO件数19件で底を打ったと言ってよいであろう。IPOバブルの再来かとの声が早くも聞こえる中ではあるが、00年の204社、06年の188社と比べると未だ半分以下のレベルであることも事実だ。ヘルスケア関連企業についてみると、前年の7社から1社増加の8社の上場があった(表1)。しかし、創薬バイオベンチャーについては、アキュセラ・インク(以下、「アキュセラ」)とリボミックの2社に留まった。前年は02年から数えて最も多い5社が上場した影響あると見られている。騰落率を見るとアキュセラが28%、リボミックが-20%と他のヘルスケア関連企業と比較して低い結果となった。

 

画像_表1_2014年に上場したヘルスケア関連企業-compressed

※表をクリックすると別ウィンドウでPDFが開きます

 

過去を振り返ると、02年にアンジェスMG、トランスジェニックの2社、03年では、メディビック(現メディビックグループ)、メディネット、オンコセラピー・サイエンス、総合医科学研究所(現総医研ホールディングス)の4社が、04年においては、新日本科学、DNAチップ研究所、そーせい(現そーせいグループ)、LTTバイオファーマ(2011年に上場廃止)、タカラバイオの5社、05年ではメディシノバ・インク、エフェクター細胞研究所(現ECI、2012年に上場廃止)の2社、07年は免疫生物研究所、ジーエヌアイ、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの3社、08年はナノキャリア、カルナバイオサイエンス、アールテック・ウエノの3社、09年ではキャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、テラの3社、10年はセルシード、11年ラクオリア創薬、シンバイオ製薬、スリー・ディー・マトリックス、カイオム・バイオサイエンスの4社、12年はジーンテクノサイエンス、UMNファーマの2社、13年にはメドレックス、ペプチドリーム、リプロセル、オンコリスバイオファーマ、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズの5社が上場している。このようにバイオベンチャーはほぼ毎年、公開を達成している。新産業の育成を目的に、経済産業省は02年から3年後の05年3月までに大学発ベンチャー企業1,000社設立の計画(平沼プラン)を掲げ、研究助成対策や経営支援制度を行ってきた。その成果といって良いであろう。ただし、バイオベンチャーを取り巻く環境は刻々と変化している。08年末時点で確認された全国の大学発ベンチャーは、目標値をはるかに超え1,809社となった。しかし、04年度をピークとして新規設立数は縮小傾向となる。

 

成功の秘訣は買収の目利き そーせいグループとトランスジェニック

そーせいグループ(以下、「そーせい」)は、ノバルティス ファーマ(以下、「ノバルティス」)に導出した臭化グリコピロニウムがシーブリ、臭化グリコピロニウムとマレイン酸インダカテロールの配合剤はウルティブロの商品名で慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬として日欧で発売となった。ノバルティスは14年12月に米国でも承認申請しており、そーせいはマイルストーンを受け取った。販売ロイヤルティーと合計した額は34億6,600万円に達する。その結果、同社の15年3月期の売上高は36億7,100万円(前年同期比77.4%増)の増収、営業利益は11億800万円(同46.6%増)の増益、前年度に計上したSosei R&Dの繰越欠損金などに係る繰延税金資産が当期に取り崩されたことで繰延税金費用を計上したため当期純利益は5億6,200万円(同63.1%減)となった。臭化グリコピロニウムは元々、英国のバイオベンチャーであるアラキス・リミテッド(以下、「アラキス」)と英国のベクチュラ・グループ・PLCが共同で研究開発していた。そーせいが05年8月にアラキスを現金23億円、株式186億円の合計209億円で買収した。この市場を活用した買収が、複数のパイプラインの中止を余儀なくされていた同社を救うことになった。05年4月にはノバルティスへ全世界の独占的開発・販売権の導出に成功。開発はほぼ順調に推移した。そして、ウルティブロは吸入ステロイドを含まないCOPD治療薬としては初めての薬剤となった。

 

らに15年2月には、英国の創薬ベンチャーであるヘプタレス・セラピューティクス(以下、「ヘプタレス」)を買収したと発表した。買収額は最大4億ドル(約476億円)。まず買収条件は、ヘプタレスの株主に1億8,000万ドルを支払い、さらに今後ヘプタレスが受け取るマイルストーン、ロイヤルティーに応じて最大2億2,000万ドルを支払うというもの。そーせいは一時金の支払いのため200億円を借り入れた。

 

ヘプタレスはGタンパク質共役型受容体(GPCR)の独自分析技術を保有しており、それを応用した創薬研究や臨床開発を展開している。認知症治療薬のフェーズIを実施中で、注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬は臨床試験実施を申請している。その他、頭痛薬や糖尿病治療薬など複数の品目が前臨床段階にある。また、武田薬品工業やノバルティスなどと共同研究を実施している会社だ。そーせいの田村眞一社長はヘプタレス買収の狙いについて「COPD治療薬依存からの脱却が必要で、買収によってそれが描けるようになった」と説明している。2016年3月期の業績は、売上高が117億3,200万円(219.6%増)、営業利益が58億9,900万円(同432%増)、税引き前当期純利益59億1,500万円(同332.8%増)を見込む。売上高が急増するのは、シーブリとウルティブロの伸びに加えて、ヘプタレスのパイプラインのうち複数品目が導出契約を締結する計画である。

 

一方、小ぶりであるが黒字化に成功したバイオベンチャーもある。トランスジェニックである。同社は2013年3月期に最終利益が黒字になったものの、投資有価証券の売却益が計上されており、営業利益や経常利益は赤字だった。2015年3月期には上場以来、初の全利益区分での黒字化を達成した。その要因はやはりM&Aにある。売上高が19億5,800万円(前年同期比21.1%増)、営業利益が2,300万円、経常利益が900万円、当期純利益は1,700万円だった。

 

新薬開発研究所からCROなどの事業を譲り受けたことに加え、病理診断などを行うジェネティックラボに出資してグループ化。実質、2つ企業を取り込こんだことで収益が大きく改善した。事業別に見ると、ジェノミクス事業の売上高は2億9,600万円(前年同期比5.9%増)と遺伝子改変マウスの作製受託などが堅調に推移し増収となったが、営業利益は6,000万円で微減だった。CRO事業は、売上高が7億9,900万円(同19.3%増)で2桁増収、営業利益は8,300万円で黒字転換した。先端医療事業は、ジェネティックラボの通期の貢献によって売上高は4億8,200万円(同15.2%増)と増収だったが、試薬販売の不調などが響き、営業利益は3,400万円の減益だった。病理診断事業は順調に推移し、売上高が3億9,600万円となり、営業利益も固定費等の効率化により2,800万円と黒字転換した。各事業が伸びていることから、引き続き収益拡大を図る。

 

加えて、CRO事業は、疾患モデルマウスの導入・開発・販売を手掛けるジェノミクス事業との協業を図る。具体的には、製薬企業や研究者に対して疾患モデルマウスを販売するのと並行して、CRO事業で疾患モデルマウスを使った非臨床試験の受託を受けられるようにするなど、疾患モデルマウスを軸に両事業のシナジー効果創出を狙う考えだ。さらに、中期経営計画達成に向け、創薬ベンチャーの経営、新薬開発に関与することで、価値を向上させる。第一弾として15年5月、医化学創薬と抗体医薬シーズの開発に関して共同研究開発契約を締結することを決めたと発表した。契約では、乳がんと膵臓がんに特異的な糖鎖を認識する抗体医薬のシーズについて、共同でヒト化するなどリード抗体の開発を行い、製薬企業への導出を目指す。疾患特異的な糖鎖を認識する抗体は、がんに対するミサイル療法などに利用できる可能性がある。2016年3月期の業績については、売上高が21億5,000万円、営業利益が4,000万円、経常利益が3,500万円、当期純利益が1,800万円を見込んでいる。

 

主要上場バイオベンチャーの2015年3月期の業績および2016年3月期の業績予想は表2にまとめた。

 

表2_上場創薬関連ベンチャー企業の決算

※表をクリックすると別ウィンドウでPDFが開きます

 

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