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2018年バイオベンチャーの新規上場と主要上場企業の決算動向~バイオベンチャーの新規上場は1社で前年同数

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2018年の国内新規株式上場企業数が前年比1社増の98社となり、2008年のリーマン・ショック後、最多だった2015年の98社に並んだ。2018年の日経平均株価は2万3000円台で始まり、その後は2万1000円台から2万3000円台で推移したが、景気の不透明感を指摘され2018年12月後半には2万円台を割り込み、証券取引所の年末の最終取引日である大納会の終値は2万14円。7年ぶりに年初を下回る水準となった。バイオベンチャーについて見ると、上場は、Delta-Fly Pharmaだけで、2016年と2017年に続き1社のみの公開となり、さびしい年となった。

 

過去を振り返ると、2002年はアンジェスMG(現アンジェス)、トランスジェニックの2社、2003年では、メディビック(現メディビックグループ)、メディネット、オンコセラピー・サイエンス、総合医科学研究所(現総医研ホールディングス)の4社が、2004年においては、新日本科学、DNAチップ研究所、そーせい(現そーせいグループ)、LTTバイオファーマ(11年8月に上場廃止)、タカラバイオの5社、2005年ではメディシノバ・インク、エフェクター細胞研究所(現ECI、12年11月に上場廃止)の2社、2007年は免疫生物研究所、ジーエヌアイ、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの3社、2008年はナノキャリア、カルナバイオサイエンス、アールテック・ウエノ(2015年11月に上場廃止)の3社、2009年ではキャンバス、デ・ウエスタン・セラピテクス研究所、テラの3社、2010年はセルシード、2011年はラクオリア創薬、シンバイオ製薬、スリー・ディー・マトリックス、カイオム・バイオサイエンスの4社、2012年はジーンテクノサイエンス、UMNファーマの2社、2013年にはメドレックス、ペプチドリーム、リプロセル、オンコリスバイオファーマ、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズの5社、2014年にはアキュセラ・インク(現窪田製薬ホールディングス)とリボミックの2社、2015年には、サンバイオ、ヘリオス、グリーンペプタイド(現ブライトパス・バイオ)の3社、2016年にはフェニックスバイオ、2017年にはソレイジア・ファーマが上場している。

 

以上のようにバイオベンチャーはほぼ毎年、公開を達成している。新産業の育成を目的に、経済産業省は2002年から3年後の2005年3月までに大学発ベンチャー企業1000社設立の計画(平沼プラン)を掲げ、研究助成対策や経営支援制度を行ってきた。その成果といって良いであろう。ただし、バイオベンチャーを取り巻く環境は刻々と変化している。その中で、公開企業の決算を見ても事業に成功した企業グループと苦戦を強いられている企業グループに線引きができるようになった。表1に2018年度の主要上場バイオベンチャーの業績と2019年の業績予想を纏めた。営業利益ベースで黒字を達成している会社には網掛けを付した。

 

表1. 2018年度上場バイオベンチャーの決算

表1_2018年度上場バイオベンチャーの決算

※表をクリックするとPDFが開きます

 

時価総額1000億円超の4社

国内バイオベンチャーで勝ち組と称される企業として、ペプチドリームとそーせいグループを挙げることができよう。バイオベンチャーの時価総額を見ると、ペプチドリームが6980億円と断トツである。次いでタカラバイオが2831億円、そーせいグループは1745億円、サンバイオは1728億円、1000億円を超える企業が4社となった(2019年8月30日現在)。製薬企業と比較すると、持田製薬が1686億円の時価総額となっている。ちなみに、同社の2019年3月期の売上高は1096億円で、営業利益は106億円だった。

 

バイオベンチャー2018年新規上場【Delta-Fly Pharma】

 Delta-Fly Pharmaの社名の由来は「Dragonfly(とんぼ)」である。とんぼは前にしか進まず退かないところから「不退転」の精神を象徴し、「勝ち虫」とも呼ばれていることから強い意志をもって医薬品開発を行う決意を表している。創業者である江島清社長は大鵬薬品工業の取締役を務め、徳島研究センター長を経て2010年12月にDelta-Fly Pharmaを設立した。同社は『「がん」だけを見ることなく、「がん患者」の全体を診ることにより、安心して身内のがん患者に勧められる治療法を提供すること』を企業理念に、既存の抗がん活性物質等を「モジュール」(構成単位)として利用し、用法用量や結合様式等に創意工夫を加えて組み立てることで臨床上の有効性と安全性のバランスを向上させた副作用の少ない新規抗癌がん剤を創製する「モジュール創薬」という独自コンセプトで抗がん剤を開発する(図1)。

 

図1.モジュール創薬の特徴

図1_モジュール創薬の特徴

※図をクリックすると別ウィンドウで拡大画像を閲覧可能です

 

 

パイプラインとしてDFP-10917、DFP-14323、DFP-11207、DFP-14927、DFP-10825、DFP-17729などを保有している。

 

DFP-10917:従来の代謝拮抗剤(がん細胞に吸収されると細胞の増殖や分裂が停止する薬剤)であるCNDACについては、固形がんを対象疾患とし、投与量は高用量・短時間で、点滴または経口投与であった。固形がんへの効果が限定的であるのに加え重篤な副作用が散見された。モジュール創薬によって投与量は低用量・長時間となり、投与経路も点滴による持続静注としたところ、従来使用されてきているシタラビンやゲムシタビンなどの核酸誘導体とは異なる作用を引き起こし、既存の化学療法が無効な難治性・再発急性骨髄性白血病患者に対しても薬効を期待できる。CNDACについては難治性及び再発の急性骨髄性白血病の患者を対象に、米国でフェーズIII試験を開始した。2021年度までにフェーズIII試験を終了、2022年度までの米国での承認・販売を目指している。日本国内においては、ライセンス先の日本新薬がフェーズI試験の準備中である。

 

DFP-14323:既存薬の「べスタチン」(ウベニメクス)は血液がんを対象疾患とし、投与量は高用量で、投与方法は単剤。点滴または経口投与される。血液がんのみの適応だが、肺がんで延命効果があったことが判明している。モジュール創薬によって投与量を低用量、投与方法を分子標的治療薬との併用としたところ、肺がんでの効果が確認された。適応追加としてEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん患者を対象とした低用量EGFR-TKI 併用治療のフェーズII試験を2018年1月から日本国内で開始し、症例登録を進めている。2021年度までに日本での適応追加の承認・販売を目指している。協和化学工業と日本における独占的ライセンス契約を締結している。

 

DFP-11207:既存薬の「ティーエスワン」(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)は血小板減少を含む血液毒性があり、治療の継続が不充分であった。DFP-11207は、5-フルオロウラシル(5-FU)に、徐放・阻害・失活させる3つのモジュール化された活性物質(モジュールI、II、III)を結合した化合物。従来の5-FU系抗がん剤で発現する血小板減少を含む血液毒性が回避されており、有効性と安全性のバランスが改善され、長期に継続して治療することが可能となった。フェーズIIの準備を行っており、2024年度までに米国での承認・販売を目指している。

 

前臨床段階には、固形がん・血液がんの患者を対象とした高分子デリバリーのDFP-14927や、難治性の卵巣がん、胃がんなどの腹膜播種転移の治療剤を目指す核酸医薬候補物質のDFP-10825、がん細胞の代謝を特異的に制御できるDFP-17729などがある。

 

図2.Delta-Fly Pharmaのパイプラインの現状

図2_Delta-Fly Pharmaのパイプラインの現状

※図をクリックすると別ウィンドウで拡大画像を閲覧可能です

 

2019年3月期の業績については、売上収益はゼロ(前年同期は1億5000万円)で、営業損失は5億9200万円(前年同期は2億4300の損失)、経常損失は6億7100万円(前年同期は2億4400万円の損失)、当期損失は6億7300万円(前年同期は2億4600万円の損失)となった。2019年12月期についても、売上収益はゼロで、営業損失は10億6600万円、経常損失は10億6600万円、当期損失は10億6900万円を見込んでいる。

 

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