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第16回 ユニークな試料 "FFPE切片"

2021/12/06 更新

こんにちは。もも太です。
FFPE切片(エフエフピーイーセッペン)と、いきなり略語からはじめてしまいましたが、FFPE切片とはホルマリン固定パラフィン包埋(Formalin fixed paraffin embedded)切片の意味です。スライドガラスに組織片を貼り付けたものを見たことはありますか?手術などで得た臓器や組織をホルマリンで固めると防腐、固定処理ができます。これらをスライドガラス上に乗る大きさにまで切り出して、途中色々な工程を経て、パラフィン(蝋)で組織周辺を包埋したパラフィンブロックを作成します。その後、ミクロトームという機器で、そのブロックを連続して3~4μmの厚さに薄切して(ちなみに調理用ラップの厚さは約11μm)、スライドガラスの上に載せていくと何枚ものFFPE切片の連続標本が出来上がります。このパラフィンブロックや標本は、室温で(冷蔵ではより長く)比較的長期間の保存が可能なので、この中の特定目的の分子を見出すことにより診断が可能となります。実際に、切片は組織診断上基本となるHE(Hematoxylin-Eosin)染色をはじめ、診断の補助情報を得るために、抗体を用いた免疫組織染色による疾患特異的タンパク質の検出、がん細胞由来の遺伝子変異の分子解析などが行われています。


 さて、FFPE切片ができるまでを簡単に述べましたが、作製中には遺伝子やタンパク質分子の品質を左右する様々な障害があり、このリスクは、人体から組織を取り出す瞬間から生じ始めます。例えば、組織を外科手術で取ってきた場合、麻酔投与から組織を取り出して固定するまでに、組織中の遺伝子は分解などの影響を受けている可能性は捨てきれません。この間の時間は非常に重要な品質を左右する要因です。特に、分解されやすいRNAやその転写物などの分析をする場合には、品質次第によって抽出がうまくいかないことがあることも十分に考慮する必要があります。組織の固定試薬の選択とその固定時間も重要な要因です。固定処理操作は、ホルマリン溶液中に浸け入れるだけであり、10%ホルマリンや中性緩衝ホルマリンなどが良く使われます。分子分析を行おうとする場合には、中性緩衝ホルマリンが推奨されます。なぜなら緩衝液中でのホルマリンの分解がゆるやかであるため、タンパク質や核酸の品質を損なうと考えられているホルマリン分解産物の産生が抑えられるからです。一方緩衝能のないホルマリンを使用する場合は、分子間架橋が起こりやすくなり、核酸同士や他の分子との結合によって本来の立体構造を損なう、生物活性を失うなど分子自身の品質に問題が出るケースがあります。このように、品質を確保するためには、標本作製までの時間や保存期間、使用した固定液の組成や固定時間など、さまざまな影響要因があることは忘れてはいけません。


 FFPE切片は一枚一枚薄切したもので、微妙にその分子組成が異なるユニークな試料であり、作製できる量も限られています。ですので、この試料を用いた特定分子解析は、できるだけ1回の解析で正しい結果を得たいものです。その品質の高低を決定する要因は、分析する分子の種類や方法によっても異なります。かかる問題点を克服して最適な品質を保つために、当社ではそのベストな方法を常に考え、高い精度と正確度を有した測定を追及し、この貴重なサンプルから得られるさまざまな分子情報を医療へ役立ててまいります。

関連サイト

病理標本作製

核酸抽出

病理・細胞診検査

分子病理 IHC/FISHなどの評価

免疫染色/IHC(染色・評価・解析)

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