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第38回 2020年の期待の新薬

2020/01/10 掲載

 2020年に国内で発売または承認されると予想される期待の新薬を選んでみました。オリンピックイヤーとなる2020年ですが、製薬業界にもファースト・イン・クラスとなる品目が複数登場する年になりそうです。

オナセムノジーンアベパルボベック(AVXS-101)

 AVXS-101(ノバルティス ファーマ)は2018年11月に国内申請されました。適応症は、「脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)1型」です。SMAは生存運動ニューロン(SMN1)と呼ばれる単一遺伝子の欠陥が原因で発症する遺伝性神経変性疾患です。ノバルティス ファーマ社によると、患者の10人中9人は2歳の誕生日を迎えるまで生きられないか、生涯にわたって人工呼吸器が必要となるという難病です。
 AVXS-101は、AAV9にヒトSMN遺伝子を導入したin vivoの遺伝子治療向けベクターです。1回投与で完結する非常に画期的な治療であることから、日本では2018年3月に厚生労働省から再生医療等製品の先駆け審査指定制度の対象品目に指定されました。通常、対象品目に指定されると審査期間は6ヶ月間に短縮されますが、2019年に承認を獲得することはできませんでした。審査が長引いているのは、前例のない新たな遺伝子治療薬であること、2018年8月に米国食品医薬品局(FDA)が公表した動物実験データ操作の問題などといった背景がありそうです。米国では2019年5月に承認されて「ゾルゲンスマ」の製品名で発売となっています。ただし、薬価が212万5000ドル(2億3380万円)という高額に設定され、世界で一番高い薬と大きな話題になりました。国内でも承認の行方とともに、その後の薬価算定の議論にも注目が集まることは必至です。ノバルティス社は2018年4月、AVXS-101を開発していた米AveXis社を84億ドル(9240億円)で買収して確保しました。

トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)

 第一三共が創製したDS-8201は、トラスツズマブに強力なトポイソメラーゼI阻害薬であるエキサテカン(DX-8951)をリンカーで結合した抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)です。2019年9月に日本で「HER2陽性乳がん」を適応症に申請、先駆け審査指定制度の対象品目に指定されており、2020年3月までに承認されると見ています。米国では2019年12月に迅速審査の下で承認を取得、2020年1月に発売となりました。FDAは申請を受理してからわずか2ヶ月の審査期間で承認を与えました。FDAもDS-8201の高い有用性を認めたということになります。承認の基になった主な試験はトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)による二次治療後に進行をみた患者を対象にした第2相のDESTINY-Breast01試験です。腫瘍が完全に消失または30%以上減少した患者の割合を示す客観的奏効率は60.9%という高い効果を示しました。ちなみに米国での製品名は「エンハーツ」になりました。国内でも早期承認に期待がかかります。

ビルトラルセン(NS-065/NCNP-01)

 日本新薬が創製したビルトラルセンは「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」を適応症として2019年9月に国内申請されました。厚生労働省から2015年10月に先駆け審査、2019年8月には希少疾病用医薬品、同年11月には条件付き承認制度の対象品目に指定されています。2020年3月までに承認可否の判断が明らかになるでしょう。ビルトラルセンはジストロフィン遺伝子のエキソン53をスキップし、機能するジストロフィンタンパク質の発現を誘導する合成モルフォリノ核酸です。承認となれば、日本発の核酸医薬の第一号になります。

セマグルチド(NN-9924)

 ノボノルディスクファーマが創製したセマグルチドの経口剤の適応症は「2型糖尿病」で、国内では2019年7月に申請されています。承認されるとGLP-1受容体作動薬としては初の経口剤となります。GLP-1受容体作動薬は血糖低下作用が強く、体重減少作用も有しており、2型糖尿病治療薬として好ましい性質を有していますが、注射剤であるため売り上げ面では経口剤のDPP-4阻害薬に負けていました。GLP-1受容体作動薬の経口剤が登場することで市場シェアは逆転すると予想しています。ペプチドであるセマグルチドが経口剤として開発できたのは、吸収促進剤であるsodium N-[8-(2-hydroxybenzoyl)amino]caprylate(SNAC)が添加されているからです。これは米Emisphere Technologies社の保有技術となっています。

塩酸アナモレリン(ONO-7643/RC-1291)

 アナモレリンは2018年11月に「がん悪液質における体重減少および食欲不振の改善」を適応症として申請されました。申請の基となった試験は、国内で非小細胞肺がんの第2相臨床試験と大腸がん、胃がん、膵臓がんを対象に実施した第3相試験です。これらの試験で体重や筋肉の増加、食欲亢進作用が確認されています。しかし、2019年8月に開催された厚生労働省の薬事・食品衛生審議会第一部会において有効性、安全性、患者の選択から情報提供の在り方まで広範に意見が出たため、継続審議の状態となっていますが、小野薬品では2020年4月から9月の間の発売を目指しています。アナモレリンは成長ホルモン放出促進因子受容体の作動薬で摂食亢進作用を有しており、小野薬品では、現スイスHelsinn Healthcare社から日本、韓国、台湾での開発・販売権を取得し、国内で開発を進めてきました。承認されれば、がん悪液質に対する初めての治療薬となり、製品名は「エドルミズ」となります。全がん種に対して処方が可能となれば大型製品になる可能性は高いと考えられます。

 最後に、上記以外の承認が期待される主な候補を挙げてみます。

 海外で販売実績があり、ブロックバスターに成長している大日本住友製薬の塩酸ルラシドンは統合失調症と双極性障害うつ、ノバルティスファーマのサクビトリル・バルサルタンナトリウム水和物は慢性心不全、武田薬品の潰瘍性大腸炎治療薬「エンタイビオ」(ベドリズマブ)の皮下投与製剤、田辺三菱製薬のバダデュスタットは腎性貧血、エーザイのレンボレキサントは睡眠障害の適応症での承認が期待されています。

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