ホーム >  技術情報  >  血中循環腫瘍細胞(CTC)解析  > CTC解析

技術情報

血中循環腫瘍細胞(CTC)解析

CTC解析

2018/11/02 更新

【ご案内】
2016年12月に一時サービスを中止していたCTC測定サービスにつきまして、
MSB社およびその代理店でCellSearch製品およびサービスの国内業務が
再開されたため当社でのCTC測定サービスを再開いたしました。
ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
お問い合わせ先はこちら

 

1.はじめに

 がんの中でも転移性のがんの病状がどのような経過をたどるのかを予測することはとても困難であるといわれています。そのため、患者の治療を行う上で常にがんの病態についての正確な情報を得ることが不可欠です。

 従来がんの病態の進行は、診察と画像診断による腫瘍の大きさの評価によって、もしくは補助的に血清腫瘍マーカーと呼ばれる血清中に存在する特定の蛋白質濃度を測定することで診断されています。しかしながら、CT検査による画像診断では腫瘍の大きさを診ることは出来ますが、腫瘍の生物学的な情報、即ちその腫瘍が活発に増殖しているのか、もしくはおとなしく休眠状態にあるのかを知ることは出来ません。また、短時間で腫瘍の大きさの変化を捉えることが難しいため、検査は数ヶ月間隔で実施されるのが一般的です。そのため、CT検査では治療が充分な効果をあげているのか、または明らかに効果が認められないのかをタイムリーに判断することが難しいのが現状です。一方で、血清腫瘍マーカーは腫瘍の大きさとの関連は乏しく、炎症等によってがんの病態とは無関係に上昇することがあります。また、一般に血清腫瘍マーカーは治療やがんの病態の変化との相関も低いといわれていて、抗がん剤による治療開始後4週から8週の時点で血清中の濃度が上昇する「スパイク現象」が認められることで、更に診断を困難なものにしています。

 無駄のない有効ながん治療を行うためには、医師が治療中にいつでも正確な病態を把握出来る情報を得ることが重要であると言われて来ました。

2.CTC検査の臨床的意義について

 1889年にイギリス人外科医であるDr. Stephan Paget が、体内でがんが転移するメカニズムを説明するための仮説「種と土壌(Seed and Soil)」、即ち種が適した環境に育つことから、原発巣と呼ばれる組織内にあるがん細胞(種)が環境の適合する他の組織(土壌)に転移して増殖する説を初めて唱えました。その後この仮説は立証され、Seed(種)である血液中の循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells:CTC)の解析は、がんの病態に関する新たな情報を提供する検査として期待されています。

 がんが転移する時、がん細胞は原発腫瘍組織から離れて血管中に入り、血流に乗って体内の様々なところへ移動していくと考えられています。このことから、CTCは転移能を有するインタクトな形態を示すがん細胞と定義され、次の図に示すようなアポトーシスや障害を受けて壊れた細胞はCTCから除かれます。

ctc01.jpg

 転移性乳がんの患者で治療前の血液中にCTCが検出される症例は、思わしくない病状の経過と相関することが報告されています。また、治療によって血液中のCTCが消失しない症例も、思わしくない症状の経過と相関することが報告されています。更に、化学療法の著効例では、治療開始後1サイクル時においてCTCが著しく減少することが報告されています。データの詳細は、「3.CTC検査の臨床研究」の項で示します。

 同様の臨床検討は、転移性大腸がん(直腸がん・結腸がん)および転移性前立腺がんにおいても報告されていて、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)では転移性乳がん、転移性大腸がん、転移性前立腺がんにおけるCTCの臨床検査における使用を許可しています。

CTC測定の臨床的意義をまとめると、以下の有用性が期待されています。

  • 治療前における血液中のCTC数により、積極的な治療の必要性の有無を判断することが出来る。
  • 化学療法開始後1サイクルの時点における血液中のCTC数により、期待された治療効果が得られているか否かを評価することが出来る。    


 CTCの臨床的な有用性は、治療開始から数ヶ月後を要するCT検査等の画像診断法よりもはるかに早い治療開始後1サイクル(約3~4週目)の時点で、がん化学療法の治療効果の評価が出来ることです。
血液中のCTC数のモニタリングにより、期待した治療効果が得られない薬剤を他の薬剤に変更する他、ターミナルケアを選択肢に加えることが可能となります。また、血液中のCTCのモニタリングとCT検査等の画像診断法との併用で、より正確な病態把握の情報が得られることが期待されます。

 以上、CTC検査は、がん治療において効果的な治療法の選択により無効な薬剤の使用を避けるとともに、期待した効果が得られない治療からターミナルケアを選択することで患者のQOLの改善に寄与することが期待されます。

3.CTC検査の臨床研究

 
 米国において、健常者、良性乳房疾患患者および転移性乳がん患者を対象として血液中のCTC測定の臨床研究が行われ、CTCの検出頻度と転移性乳がん患者の生存期間に関する前向き多施設共同臨床研究が行われました。この臨床研究の結果は、2004年のN. Engl. J. Med.(New England Journal of Medicine)に報告されています。

CTC の検出頻度

 セルサーチシステムを用いて、健常者145名、良性乳房疾患患者200名および転移性乳がん患者177名の血液7.5mL中のCTC数を測定したところ、健常者では0.1±0.2 個、良性乳房疾患患者では0.1±0.9個でした。このデータを基にCTC数2個以上を陽性とした場合の転移性乳がん患者におけるCTC陽性率は61%、5 個以上を陽性とした場合のCTC陽性率は49%でした。

ctc05.gif

 

転移性乳がん患者の生存期間に関する臨床研究

  転移性乳がん患者を対象に行われた前向き多施設共同臨床検討において、治療開始前の患者177名についてセルサーチシステムを用いて血液7.5mL中のCTC数を測定したところ、CTC数が5個未満の患者群とCTC数が5個以上の患者群を比較すると、無増悪生存期間(Progression Free Survival:PFS)の中央値は、5個未満の患者群が7.0ヶ月であったのに比して、5個以上の患者群では2.7ヶ月でした。また、全生存期間 (Overall Survival:OS)の中央値は、5個未満の患者群が18ヶ月以上であったのに比して、5個以上の患者群では10.1ヶ月でした。

 以上、治療前に血液7.5mL中のCTC数が5個未満の患者群は5個以上の患者群と比べて生存期間が有意に長いという結果から、治療前の血液中のCTC数により、積極的な治療の必要性の有無を判断することが出来ることが示唆されます。

ctc06.gif


 一方、治療開始1サイクル後の患者163名について同様に血液7.5mL中のCTC数を測定したところ、PFSの中央値は5個未満の患者群が7.0ヶ月であったのに比して、5個以上の患者群では2.1ヶ月でした。また、OSの中央値は5個未満の患者群が18ヶ月以上であったのに比して、5個以上の患者群では8.2ヶ月でした。更に、治療前にCTC数が5個以上でしたが治療後の最初のフォローアップ時にCTC数が5個未満に減少した患者群とCTC数が継続的 に5個以上の患者群を比較すると、PFSの中央値は5個未満の患者群が7.6ヶ月であったのに比して5個以上の患者群では2.1ヶ月で、OSの中央値は5個未満の患者群が14.6ヶ月であったのに比して5個以上の患者群では9.2ヶ月でした。

ctc07.gif

ctc08.gif


 以上、治療前と同様に治療開始1サイクル後でも、血液7.5mL中のCTC数が5個未満の患者群は5個以上の患者群と比べて生存期間が有意に長く、治療前 にCTC数が5個以上の患者群の中で治療後の初回フォローアップ時に5個未満となった患者群は継続的に5個以上の患者群と比べて生存期間が長いという結果から、血液中のCTC数を測定することで、例えば化学療法開始1サイクル後の初回フォローアップ時に治療効果の判定が可能であることが示唆されます。このことから、CTC検査は期待した治療効果が得られないままに抗がん剤治療を継続している患者の負担を軽減することが出来るものとして期待されます。

国内での臨床研究

 国内において、中村清吾医師(昭和大学)を総括責任者として、転移性乳がん患者を対象とした5施設による多施設共同臨床研究が行われました。この臨床研究の結果は、2010年に開催された米国臨床腫瘍学会 (American Society of Clinical Oncology:ASCO)の乳がん部会で発表されました。
 

 転移性乳がん患者107名を対象にセルサーチシステムを用いて治療前の血液中のCTC数を測定して、血液7.5mL中のCTC数が5個未満の患者群と5個以上の患者群を比較したところ、全生存期間(OS)の中央値は5個未満の患者群が127週以上であったのに比して、5個以上の患者群では約42週でした。以上、治療前の血液7.5mL中のCTC数が5個未満の患者群が5個以上の患者群の生存期間より有意に長いという、米国における臨床研究と同様の結果でした。
 一方、抗がん剤治療前後の画像診断によって標的病変が、完全奏効(complete Response:CR)、部分奏効(Partial Response:PR)および安定(Stable Disease:SD)と評価された患者56名ならびに進行(Progressive Disease:PD)と評価された患者18名について、CTC数の推移を解析したところ、抗がん剤治療が奏効したと判断されたCR、PRおよびSDの患者群では、治療前の血液7.5mL中のCTC数と治療開始後1サイクル(3週~4週)の時点および治療開始後12週の時点でCTC数は有意に減少しました。奏効しなかったと判断されたPDの患者群では、治療前と治療後のCTC数に有意な差は認められませんでした。
 以上、抗がん剤治療が奏効した患者群では治療前後の血液中のCTC数が有意な減少を示し、また治療開始後1サイクル(3週~4週)時点の血液中のCTC数が 治療前より有意に減少しているという結果から、化学療法開始後1サイクル時点の血液中のCTC数により、治療が奏効するか否か評価することが出来ることが示唆されます。

主ながん種における転移性がん患者の血液中のCTC検出頻度

 米国において、健常者、非悪性疾患患者および主要ながん種の転移性がん患者について、セルサーチを用いて血液7.5mL中のCTC数を検討した研究発表があります。この研究結果は、2004年のClin. Cancer. Res.(Clinical Cancer Research:CCR)に報告されています。

 主要な転移性がん患者964名から採血した2183検体のCTCを測定して、各がん種におけるCTCの検出頻度のグラフおよびCTC数の分布図を示しました。また、グラフ中にCTC数が2個/7.5mL以上を陽性とした場合の陽性率(%)を示しました。

ctc09.jpg

ctc10.gif

 

お問い合わせ